ある程度以上の大きさをもつクローン体は、外部からのサポートが 無いと細胞が徐々に弱って行くという。 健康状態にもよるけれど、ヒトの場合なら計算上は およそ一年が限界で--- 「ちょっと待てよ、計算上ってどういうことだ!?」 「…ごめんなさい…私、どうしても人体でのデータが欲しくて… あの時のあなたなら、きっと蘇った椎子を受け入れるって 思ったのよ」
椎子さんの協力があったなんて嘘だった。 由梨江さんは、椎子さんを実験台にしたんだ。
寿命が尽きる前に培養カプセルへ戻せば椎子さんは助かるという。 でも、再び目覚めさせても今の時点では同じこと…… 椎子さんは、眠り続けるしかないんだ。 おとぎ話の、いばら姫のように。
僕には由梨江さんを責めることなんてできない。 最終的な判断を下したのは僕なんだ。 僕は…さよならも言えないまま彼女と別れることが悲しくて、 事実を受け入れることが恐くて…。 その気持ちはまだ僕のなかで渦巻いている。 せっかく取り戻した椎子さんとの生活を今度こそ永遠に失って しまうなんて、耐えられるだろうか。
そんなある日、帰宅すると真っ暗な家の中で椎子さんが ぐったりとソファに身を横たえていた。 「ごめんなさい…すこし気分が悪くて。すぐ御飯のしたくしますね」 つらそうに笑う彼女の姿に、僕は心をきめた。 これ以上僕のエゴで大事な人を苦しめちゃいけない。
そんなとき、椎子さんが僕を呼んで言った。 「お願いがあるの…孝さん、しいこが何も知らない間に 眠らせたりしないでね」 「………!」 言葉をなくす僕の手を、椎子さんは自分の腹部に運ぶ。 「わたし、あかちゃんができたの…」
…赤ちゃん? 僕と椎子さんの赤ちゃん?
…………そんな。僕は…どうしたら………
+マエ+ +モドル+ +ツギ+